極上の他人


「だったら、他のことはもうどうでもいいから。真奈香ちゃんのこと、怒らないで。
怒る余裕があるなら、私のことをもっと可愛がってよ」

普段なかなか出てこない私の本音が、溢れるように飛び出した。

私……今、すごいことを言わなかった?

「あ、あの……今のはその、」

『もっと可愛がってよ』

なんて言葉、思いがけないタイミングで言ってしまい、体中が熱くなる。

確かに可愛がって欲しい気持ちは溢れているけれど、伝えるつもりはなかった。

なのに、勢いでつい、言ってしまった。

慌てる私に、輝さんはにやりと笑うと。

「真奈香ちゃん、聞こえただろ?史郁は俺に可愛がってもらえれば他には何もいらないんだ。とっくに自分で自分の幸せを見つけてるから、これ以上何も気にしなくていい。
真奈香ちゃんは自分の家族と楽しく過ごせばいいんだ」

今までとはうって変わった優しい声で頷いた。
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