極上の他人


真奈香ちゃんが何か呟いている声が聞こえるけれど、それはあまりにも小さくて聞き取れない。

それでも、輝さんは嬉しそうに相槌を打ちながら「そういうことだ」やら「羨ましいだろ」と答えている。

真奈香ちゃんを責める様子もない、落ち着いた物腰に私も安心してほっと息を吐いた。

けれど、

「くれぐれも、お母さんが史郁に迷惑をかけないように注意してくれよ」

最後にそう言って釘を刺すことだけは忘れなかった。




電話を終えた輝さんは嬉しそうに私を膝の上に抱き上げると、ソファに体を預けた。

私は輝さんに覆いかぶさるような姿勢で視線を合わせた。

整った輝さんの顔を間近に見ながら、心が温かくなっていくのを感じる。

「いい言葉だね」

輝さんの目じりに指先を這わせながら、ふと呟いた。
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