極上の他人


私は体を起こし、ずっと気になっていたことを聞いてみた。

「輝さん……お母さんがお店に来たって……それって、耳に大きな真珠のピアスをつけていた人?
それに、輝さんが慌ててお店の外に連れ出した人?」

輝さんの恋人ではないかと、彼女のことがずっと気になっていた。

さっき、輝さんが「お母さんに、二度と俺の店に来るなと言っておいてくれ」と真奈香ちゃんに言っていた時に、そう思ったけれど。

「そうなんでしょ?私とお母さんを会わせたくなくて、急いでお店の外に連れ出したんでしょう?」

「ああ。真奈香ちゃんが史郁のことを気にして悩んでいるから、あの人は、史郁を真奈香ちゃんに会わせて『悩む必要はない』とか、『お母さんは悪くない』とか……ああ、今思い出しても腹が立つけど、史郁にそう言って欲しいって身勝手なことを言いに来たんだ。
史郁の居場所を聞きに店に来たけど、あの時は店に史郁がいたから俺も焦った」

「そう。……良かった」

「ああ、会わせなくて良かったよ。自分が史郁を見放したことを正当化することばかりを言うから、史郁に会わせる気にはならなかったんだ。
本当、会わせなくて、良かった」

ほっと息をつき、ようやく安堵の表情を見せた輝さん。

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