極上の他人
「輝さんが無理していること、知ってるから。新しいお店の準備も大変なんでしょ?
本来ならお店はバイトに任せることもできるし顔を出す必要もないのに、私のためにずっと出てくれていたんでしょ?」
輝さんの首筋に顔を埋め、ぼそぼそと呟く。
私の言葉に輝さんからの返事はなくて、それが肯定の意味だとすぐに理解した。
「輝さんが私のために夕食を準備してくれるのは嬉しいし、ありがたい。
それに、車で送り迎えしてくれるのも、楽しみだった。
でも、そうする理由がなくなったんだから、輝さんが無理する必要もない。
だから、本来しなくてはいけないことに集中して欲しい。
もちろん、時々お店に寄らせてもらうし……あのカウンター席で茶わん蒸しも食べたいけど。
時々でいいから」
ね?
と最後にそう呟いて、私は思いきり輝さんを抱きしめた。