極上の他人

『もちろん、子供を愛さないだけでなく傷つける親なんて許せないけど、それが現実なら……子供を愛せない親から生まれた自分はついてなかったと諦めて、自分で幸せを見つければいい』

輝さんの軽やかな口調は、重い現実をほんの少しの笑いに変えた。

『どれほど努力しても両親に愛されないのなら、無駄な努力はやめて、本当に自分を愛してくれる人を見つけたほうがいい。史郁は、愛されるに値する人間なんだから』

愛されるに値するって言われても、自分ではよくわからない。

どこまで私をかいかぶっているんだろうかと戸惑った。

じいちゃんとばあちゃん、そして誠吾兄ちゃんから愛された記憶はあるけれど。

『史郁を愛する人は、目の前にいるだろ？』

輝さんはくすくすと私の耳元で笑いながらそう言って、私を過去の呪縛から解き放つきっかけを作ってくれた。

きっかけをくれただけで、まだまだ過去の悲しみ全てを浄化したわけではないけれど、そう言ってもらったおかげで、少しずつ強くなる自分を感じている。