極上の他人


あの夜、私には目もくれず真奈香ちゃんをひたすら愛する母を目の前にして、私は予想以上に傷ついた。

けれど、輝さんが優しい言葉を幾つもくれたおかげでどうにか受け止められたと思う。

そしてあの日、真奈香ちゃんの家には入らなかった。

母の新しい家庭に、異分子のような私が馴染めるわけもないし、私の存在を知った真奈香ちゃんがどうしても私に謝罪したいという誘いだったから、遠慮した。

真奈香ちゃんが私に謝罪するというのはおかしいし、受け止められないと感じたからだ。

母が私を捨てて、血の繋がりのない真奈香ちゃんを選んだことは真奈香ちゃんの責任ではないし、彼女に謝られても悲しいだけ。

自分の境遇の哀しさを改めて思い知らされるようで、嫌だった。

おまけに母は心底迷惑そうな表情を浮かべていたし。

< 371 / 460 >

この作品をシェア

pagetop