極上の他人


輝さんも、私と母の関係改善は望めないと判断したようで、あの日はそのまま帰った。

そしてあの日から一年以上経ち、ようやく母のことを諦めようと思えるようになった。

諦めるというよりも、期待しないと言ったほうが正確だ。

親だから私を愛してくれるのが当然なのに、と期待するのをやめた。

とっくに期待なんて捨てたと思っていたけれど、冷たい視線を向けられただけで心は大きく揺れて傷ついた。

期待しているから傷つけられる。

そんな単純なことに気付いた途端、私の気持ちはすっと軽くなった。

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