極上の他人


耳元に残る白い傷跡は、母が私を愛することはない証だとわかってはいても、まさか娘を心底嫌う母親なんていないだろうと、どこかで考えていたのかもしれない。

最後の最後には、私を求めてくれるんじゃないかと期待していた。

「甘かったな。……お母さんは、自分の幸せしか求めていないのに」

遠くに広がる街の景色に向かってそう呟いた。

小さな頃、見慣れたその景色のどこかにお母さんがいるのではないかと、なんの根拠もないまま見下ろしていたけれど、今はもうそんな思いから解放されてすっきりしている。

「お母さんか……結局、真奈香ちゃんのお母さんだもんね」

私だけがどうしてこんな思いを抱えているんだろうかと長い間落ち込んだけれど、今ではそんなことに振り回されず、自分の力で自分の幸せを築いていこうと思っている。

私には、愛してくれる人がいるんだから。

「幸せに、なってやる」

ふふっと小さく笑いながら、両手で握りこぶしを作った。

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