極上の他人


亜実さんのように、世間で認められるほどの大きな賞を獲るにはまだまだ勉強不足だけど、お客様に喜んでもらえる家を設計できるようになりたい。

それに、「二人目不妊」という苦しみを抱えながらも仕事で実績をあげ、その苦しみを乗り越えた亜実さんのように、人として強くなりたい。

自分の幸せが何かがわかる、素敵な女性になりたい。

そして、輝さんに秘密にしている夢を早く叶えたい。

あの展示場で輝さんの名前を思わず呟いた日から抱いている夢は、以前の私からは想像もできないもの。

自分で自分の幸せを掴みとれと教えてくれた輝さんのおかげで、私は本来の姿を取り戻すことができた。

『両親から見放されるような自分には何の価値もない』と思い込んでいた私を根本から崩し、自分の価値は自分で作り上げていくものだと根気強く教えてくれた輝さん。

どう努力しても両親からの愛情を得られないことに落ち込み苦しむ私を見かねて

『そんな時間はもったいない』

と呪文のように何度も言ってくれた。

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