極上の他人


私が自分からプロポーズするなんて想像もしていないはずの輝さんは、目を点にして驚くはずだ。

『俺がいつ言おうかと楽しみにしている言葉を先に言うなよ』

と言って、怒ったふりで私を抱きしめてくれることも簡単に予想できる。

その腕の中から抜け出したくないと思うに違いない私を想像することもたやすい。

今だって、ことあるごとに『早く嫁に来いよ』と言ってくれる輝さん。

その真意はたぶん、輝さんが私を愛していることを私に伝え安心させ、無用な心配をすることなく仕事に打ち込めるように、そんなところだと思う。

輝さんが私と結婚したいと思ってくれているのは事実だけど、その気持ちを後回しにしてでも私の仕事に対する思いを優先してくれる。

そんな輝さんに、感謝の気持ちもこめて。

『これからは、私が輝さんを幸せにしてあげる』

なんて言葉もつけてあげよう。

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