極上の他人


その日を想像するだけで、顔は緩み、思わず笑い声も漏れてしまう。

「……どうした?思い出し笑いか?」

「え?ううん、なんでもない」

「また何か企んでるのか?頼むからお手柔らかに頼むよ。この間みたいに、家に帰ったらバニーガールの史郁が飛び出してくるとかやめてくれよ。いくら俺の誕生日だといっても、あんなプレゼントは……まあ、嬉しかったんだけどな」

「やっぱり嬉しかったんだ。千早くんと考えてバニーちゃんにしたんだけど、今度は何がいい?千早くんが知ってるコスプレの衣装のお店には色々あったよ、ナースとか婦人警官とか。あ、セーラー服もあった」

「は?千早とそんな店に行っていたのか?」

「うん。男なら誰でも、恋人のコスプレを見たいって願望は持ってるって言って、レクチャーしてくれてね。お店にも連れて行ってくれたんだ」

「ち、ちはやー」

ちょうど会社の前に車を停めた輝さんは、ハンドルの上に置いた両腕に頭を乗せると「あいつ、一度しめてやる」などとぶつぶつ言っている。

千早くんとふたりで出かけたことが気に障ったらしい。

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