極上の他人


「ん?どうした?」

私を気遣うように、輝さんが私の顔を覗き込む。

隣の椅子に腰かけた輝さんは、カウンターに頬杖をつき、頭を手の平に乗せた。

心配そうに瞳が揺れている様子を見せられると、まるで私は輝さんの特別な人ではないかと、錯覚してしまいそうになる。

私は輝さんが好きなのに、輝さんは私を好きなわけではない。

それを忘れてはいけないのに、気持ちはぐんぐん輝さんに惹きつけられていく。

本当、罪な人だ。

「あ、あの、私、お腹がすいてるんで、食事、いただきます。今日は何ですか?」

切ない気持ちをふっきるように無理矢理作った笑顔と明るい声で輝さんと千早くんに声をかけた。

急に明るい顔を見せた私の声に輝さんも千早くんも一瞬戸惑ったけれど、千早くんは何も気づいていないように口を開いた。

「今日はカレイの煮つけ。それにふみちゃんが大好きなマカロニサラダもあるよ。あ、豆腐ハンバーグも用意できるけど?どれも輝さんが朝から準備していたから絶対うまいはずだよ」

千早くんは、普段よりも明るい声でその場の雰囲気を変えてくれた。

きっと、私の気持ちも何もかも、見透かされてるんだろうな。


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