極上の他人
そして、私の気持ちが実ることはないとわかっていても、励ましてくれているに違いない。
私の大好物ばかりを挙げて、必要以上の優しさを与えてくれるのも気のせいじゃない。
「あ、そういえばふみちゃんが飲みたいって言ってたバーボン、入ってるよ。よかったら出そうか?」
「え?もしかしたら、馬の?」
「そう。馬の」
二人で顔を見合わせて含み笑い。
以前、たまたまお酒の話をしていて、千早くんがお気に入りのお酒がその時ちょうど切れていて、また取り寄せるよ、と何気なく言ってくれたお酒だ。
私にとっても思い出深いそのお酒の話で盛り上がったこともあった。
「ふみちゃん、バーボンなんて飲むのか?」
探るような輝さんの声に、私は小さく頷いた。
「普段はあまり飲まないんですけど、お酒は結構強いんですよ。バーボンもストレートで飲んじゃいます」
「へえ。その華奢な身体だと、すぐに酔っぱらいそうなのにな」
「よく言われます。そんな見た目に付け込まれて、下心のある男性に酔い潰されないようにって誠吾兄ちゃんに鍛えられたんです」
「へえ……そう言えば、誠吾先輩もザルだもんな。酒に強いのは血筋だな」
思い返すような輝さんの声に、私もふふっと肩を竦めた。