極上の他人
確かに誠吾兄ちゃんもじいちゃんもお酒が強くて、二人が酔い潰れたところなんて見たことがなかった。
「誠吾兄ちゃんは、私の二十歳の誕生日に私とさしでお酒を飲んで、私が酔わずに飲めるお酒の量を確認したんです。ビールや焼酎とか、ワインもあったかな。とにかく自分が飲める量を知らなきゃだめだって言ってたくさんのお酒を並べて」
その日の事を思い出すと、なんだか懐かしくて口元が緩んでしまう。
私の二十歳の誕生日だということで、朝からばあちゃんが用意してくれたごちそうや、ご近所のケーキ屋さんが『ふみちゃんお誕生日おめでとう』と書かれたチョコレートのプレートがのった大きなホールケーキを持ってきてくれたり、お祝いムードいっぱいだったけれど。
誠吾兄ちゃんが用意してくれたお酒がリビングに並べられると、その場はおかしな雰囲気になった。
『ごちそうを食べた後は、大人になった史郁が男どものごちそうにならないように、飲み比べだ』
真面目に話す誠吾兄ちゃんに、もともとノリのいいじいちゃんも加わり、大宴会になった。
騒ぎを聞きつけたご近所さんも交えた酒盛りは明け方まで続き、いつまで飲んでも酔いつぶれない私は、じいちゃんの自慢の孫という称号を授かった。