極上の他人
「へえ、そんなに強いんだ、見た目とは違うな」
「そうなんです。でも、お酒が何より大好きってわけでもないし、同じお金と時間をかけるのなら、おいしいお料理の方がいいので、普段は全然飲まないんですけどね」
「だよな、ここに来ても、お茶ばかり飲んでるし」
「あ、すみません、営業妨害ですよね」
輝さんの言葉にはっとした私は、思わずそう呟いて頭を下げた。
「いや、ふみちゃんにはちゃんと食事してもらったほうがいいし、それは構わないんだけど」
どこか言葉を濁した輝さんに、私は首を傾げる。
「どうか、しましたか?」
「いや、あまりお酒に興味がないのに、どうしてバーボンの話なんかを千早としていたんだ?」
輝さんはどこか不機嫌そうで、眉も寄せて、私をじっと見ている。
どうしてだろう?
「えっと、バーボンの話ですか?たまたま、以前参加した亜実さん主催の合コンでお酒に詳しい男の子がいて、彼が好きなバーボンが……」
「お馬さん?」
「あ、はい、そうです……けど?」
「へえ、合コンでね」
輝さんは更に低い声でぽつり。
その真意はわからないけれど、ただ、不機嫌だということはよくわかる。