極上の他人


たとえ亜実さんから頼まれているとはいっても、当然のように夕食の用意をしてもらうなんて、申し訳ない。

そして、私の隣の席には、相変わらず輝さんが座っていて、どうしても意識は彼に集中してしまう。

「あ、あの……」

「ずいぶん千早と仲良くなったんだな」

輝さんが、店内の様子をを気にしながら呟いた。

「カウンターで食事をする時、色々と話しかけてくれるから、少しずつ親しくなって、というか、千早くんが優しいだけで」

「ふーん。年も近いしな。え?同級生?」

「いえ、千早くんは一つ年上です。院生らしいですけど」

「ああ。何か小難しい研究してるみたいだな」

「はい、私もよくわかりませんけど」

有名大学の大学院に通っている千早くんは、遺伝子の研究をしているらしい。

経済的に豊かなご両親から、金銭面ではかなりの協力をしてもらっているけれど、成人しても尚、親に頼るのも情けなくてこのお店で多少の生活費を稼いでいると言っていた。

『俺より年下のふみちゃんが自立してるのに、いい大人の俺が親に頼りっぱなしっておかしいだろ』

そう言った千早くん。

見た目はかわいらしいのに、意外と頑固な性格かもしれない。

年が近くて一人暮らし同士、共通の話題もあって、気の合う友達になりつつある。

亜実さんに感謝するとすれば、千早くんと仲良くなれたことかもしれない。


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