極上の他人


そんな亜実さんだから、私に早く家族を作ってあげたいと、そう思ったんだろうと思う。

今の私には、家族と呼べる人は誠吾兄ちゃんと弓香さんしかいないから、早く結婚した方がいいと、そう思っているんだろう。

そんな境遇を顧みるたび、自分を悲劇のヒロインのように思う時もあるけれど、既にいい大人なんだから、そんなことに意味はないとわかっている。

それに、20年近く会っていない父と母を家族だと思うことはないし、今では接点すらない。

彼らだって、私との接点が欲しいなんて望んでいないはずだ。

血の繋がりはあっても他人のような関係だから、家族とは言えない。

自分が置かれているそんな現実に慣れたつもりでいても、そのことを考えると、いつもながら、心が重い。

そして私はまだまだ弱いと実感させられる。

「ん?どうした?」

黙り込んだ私に、輝さんが心配そうに呟いた。

「あ、大丈夫です、なんでもないです」

「そう。ならいいけど。ふみちゃんのことは何だか放っとけないんだよね。いつも強気なことを言ってるけどどこか不安そうだし、一人暮らしのせいか一生懸命生きてるって感じで危ういし。
お見合いを進めることはできなかったけど、困ったことがあったらいつでも俺に頼っていいから」

輝さんの言葉に、私は小さく笑って、何も答えなかった。


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