極上の他人
②
翌朝、熱い体をベッドからどうにか起こして息を吐いた。
「うわ、39度もある」
手にしている体温計が示す数字を見た途端、だるい体が、更につらいものに感じた。
会社に電話しなきゃ、それに、これだけ熱があるし病院に行った方がいいよね。
保険証とお財布……、えっと、何か飲んだ方がいいのかな。
熱のせいでぼんやりとしている頭で色々考えてもしっかりとした答えにたどり着けなくて、とりあえずベッドからおりなくちゃと体を動かしてみる。
思うように動かない体でようやくベッドから足をおろしてみても、力が入らなくて立ち上がるのにも一苦労だ。
それでも、とりあえず電話と病院、電話と病院、そう呟きながら立ち上がる。
一人暮らしをしている中で一番苦しい一日が始まったな、とため息をついた。
その後、ふらふらしながらも近所の病院に行って診察を受けた。
混み合う病院の待合の椅子に体を預けて寝ている間に、更に熱が上がったような気がしたけれど、お医者様から『風邪ですね』とあっさりと言われた途端気持ちが楽になった。
病院で測った体温は相変わらず39度だったけれど、会計を済ませて近くの薬局でお薬を受け取る頃には、足に力が戻っているようだった。
とはいっても数日間は部屋でおとなしくしていなければはいけない。
週末ゆっくりと体を休ませれば来週には会社に行けるかな、と思いながら、帰り道のスーパーで必要な物を買い込んだ。