極上の他人


当時、じいちゃんもばあちゃんも教師をしていて、ふたりとも忙しいにも関わらず私の生活全般に気を配ってくれた。

大学生だった誠吾兄ちゃんも、大学の授業やバイトのシフトを調整して私の授業参観に顔を出してくれたり、運動会の時には当然のように一緒に親子競技に参加してくれた。

誠吾兄ちゃんの大学の学園祭に連れて行ってくれた時には『俺の大切なオンナ』。

友達にそう紹介してくれて、子どもながらに優越感に浸ったこともいい思い出だ。

それまで両親から得られなかった家族からの愛情というものをたくさん注いでもらった。

私が暮らしていた郊外にある二階建ての家には大きな桜の木があって、春になると綺麗に舞う桜吹雪を見上げながら、まるで自分が桜の精になったような錯覚も覚えた。

桜の幹はかなり太くて、私が両腕を回して抱きついても、絶対に両手が繋がることはなかった。

その桜の木のにおいと温度を思い出すと、とても切なくて目の奥が熱くなる。

とても幸せな日々だった。


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