極上の他人
「亜実さん、千早くんにだって、好みがあるはずです。私を恋愛対象としては見てないと思いますよ」
『そんなことないよ、付き合ってみれば結婚まで一直線って場合もあるし、輝くんよりもしっくりきそうだし……』
「とにかく、千早くんは、私にはもったいないですよ。今日のコンパに来ている女の子との縁を探ったほうが賢明です」
『うーん……そう?輝くんとふみちゃんも絶対にうまくいくと思って組んだお見合いだったのにだめで、千早くんもだめか。私の直感も鈍ってきたな』
はあ、と大きなため息を吐く亜実さんの口から何度も呟かれた『輝くん』。
その名前を聞く度に胸がきゅっと鳴る。
輝さんとのお見合いが、遠い昔の事のようにも思えるけれど、私の中では鮮明な記憶として残っている。
輝さんが経営している『マカロン』というバーでのお見合いは、お見合いにしてはあまりにもラフすぎる場所だったけど、それでも輝さんは優しく接してくれた。
お見合いを進めたいと思ってもらうことはできなかったけど、一人暮らしの私の生活全般を、とても心配してくれた。
まるで私を妹のように見つめながら。
妹か……。
さしずめ出来の悪い意地っ張りな妹、かな。