極上の他人
『じゃ、ふみちゃん、あまり電話を長引かせて熱がぶり返しても困るから、もう切るわね。来週以降で、またコンパをセッティングするから次は絶対においでよ』
「はい、ありがとうございます。でも、コンパはもういいですよ、私には向いてないんで」
『大人なんだから、向いてなくても踏ん張って参加しなくちゃ。いい縁はつかめないよ』
「ははっ」
『じゃ、また月曜日ね。週末、体調悪くなったら遠慮しないで電話しなさいよ。じゃあね』
勢い溢れる口調で会話を終わらせた亜実さんの元気な様子に、少しだけ気持ちが浮上した。
輝さんの名前が聞こえる度にとくとくと鼓動は跳ねて、どうしようもなく泣きたくなったけれど、亜実さんの明るい声はその切なさを半減させてくれた。
それでも、やっぱり心に沈んでいく重苦しい感情を否定することはできない。
千早くんとのお見合いか……。
亜実さんだけじゃない、輝さんだって、それがいいんじゃないかと言っていた。
自分よりも千早くんの方が、私に合うと言って平気な顔で笑っていた。
その笑顔が私にとっては凶器になると、気づかないで、そう言っていた。