極上の他人



幸か不幸か、こんな日に限って残業することもなく、定時で仕事を終える事ができた私は、亜実さんの置き土産であるショップカードを手に、会社を出た。

私が今日訪ねるという段取りをつけているとなれば、顔を出さないわけにはいかないかと思い、重い足取りで目当てのお店を探す。

そして。

大通りに面した場所にその店はあった。

『マカロン』

というお店は、茶色い外壁がどこかレトロな雰囲気を漂わせ、温かい佇まいにほっとするような、新しい店舗だった。

私はそのお店の前に立ち、手に持っているショップカードを再度見直した後、よしっと気合を入れてドアを開けた。

「いらっしゃいませ」

外観からの想像よりも広い店内から聞こえた声に視線を向けると、私のカバンに入っている写真と同じ顔が笑っていた。




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