極上の他人
②
幸か不幸か、こんな日に限って残業することもなく、定時で仕事を終える事ができた私は、亜実さんの置き土産であるショップカードを手に、会社を出た。
私が今日訪ねるという段取りをつけているとなれば、顔を出さないわけにはいかないかと思い、重い足取りで目当てのお店を探す。
そして。
大通りに面した場所にその店はあった。
『マカロン』
というお店は、茶色い外壁がどこかレトロな雰囲気を漂わせ、温かい佇まいにほっとするような、新しい店舗だった。
私はそのお店の前に立ち、手に持っているショップカードを再度見直した後、よしっと気合を入れてドアを開けた。
「いらっしゃいませ」
外観からの想像よりも広い店内から聞こえた声に視線を向けると、私のカバンに入っている写真と同じ顔が笑っていた。