極上の他人



日曜日、ようやく平熱に戻った私は、疲れない程度に家の事をしながら過ごしていた。

冷蔵庫に残っていた食材を使って、簡単なお惣菜を作って冷凍したり、たまっていた洗濯物を一気に洗濯したり。

普段の週末と変わらない地味な時間だなと気づいて、苦笑すら浮かぶ。

体調が戻った途端、家事に精を出す23歳。

『若いのに、もったいないわよー。もっと外に出て楽しまなきゃだめよ』

そう言って明るく笑う亜実さんの声が聞こえてきそうだ。

確かに私もそう思うけれど、それでも簡単に自分は変えられない。

「床も拭いておかなきゃ」

悲しいかな、外に出るよりも一週間さぼっていた掃除を優先させてしまう。

一人暮らしには広すぎる3LDKの家は、もともと誠吾兄ちゃんが住んでいて、家具もほとんど誠吾兄ちゃんから引き継いだ物。

駅から近くてセキュリティも充実しているこのマンションで暮らしていた誠吾兄ちゃんが転勤となって半年。

自動車メーカーでデザインの仕事をしている誠吾兄ちゃんは、長く付き合っていた恋人の弓香さんと結婚してアメリカで仕事をしている。

一人で日本に残る私のことを最後まで心配して、一緒にアメリカに行こうと言ってくれたけれど、英語はまるっきりダメだし、アメリカでやりたいことも特に思い浮かばない私は、ひとりで日本に残った。


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