極上の他人
熱のせい
①
そんな事を考えながらフローリングをワイパーで綺麗にしていると、玄関のチャイムが鳴った。
特に友達と約束をしていた記憶もないし、誰だろう。
ダイニング脇にあるモニターを覗くと、そこには。
「え、輝さん?」
モニターの前には、もう会うこともないだろうと思っていた輝さんがいた。
怒りを露わにした千早くんからの夕べの電話を思い出す。
そう言えば、千早くん、何かを言いかけていたような。
モニター越しに、輝さんの様子をじっと見る。
何も言わずにお店から帰った私を気にして、わざわざここまで来たんだろうかと、どきりとするけれど。
それ以前に、どうして私の自宅を輝さんは知っているんだろう。
モニターの前で立ち尽くしたまま輝さんの顔を見ていると、再びチャイムが鳴る。
少し焦っているような輝さんの様子に違和感を覚えつつも、初めて見る余裕のない輝さんから目が離せなかった。