極上の他人


輝さんのお店に何度か通ううちに輝さんに魅かれて、そして好きになったけれど、好きになったと同時に優しく拒まれた。

千早くんとお見合いすればよかったなとまで言われて、諦めようと決めたのに。

唇をぎゅっとかみしめる。

右手に返されたお金。

そして輝さん手作りのお惣菜の数々。

そして何より、私を見つめる輝さんの瞳は、私を愛しく思っているんじゃないかと錯覚しそうなほどに強く私を射る。

その視線の強さの意味を、体力が落ちている私の思考能力では、まともに考えることができないどころか自分に都合よく考えそうで怖い。

私に対して恋愛感情なんて持っていないという態度を見せて私を落ち込ませては、それを補う優しさも合わせて与えて。

私が輝さんを諦めるタイミングを摘み取るような、罪深い笑顔を見せている。

輝さんをようやく諦めて、もう会わないと決めたばかりなのに、どうしてそんな、私の気持ちを揺らすような言葉と瞳で私を追いつめるんだろう。

私を受け入れてくれないのなら、もう放っておいて欲しいのに。

苦しくて、泣きそうだ。

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