極上の他人
思考回路がうまく機能していない頭で、つまらないことを延々と考えながら、荒い息を続けていると、輝さんがいつのまにか体温計を持ってきてくれた。
「キッチンのテーブルにあったから。測ってみろ」
そう言って、私に手渡した。
私は毛布の中から手を出して、それを受け取り、熱を測った。
体全体に力が入らなくてうまく測れているのか不安だったけれど、検温終了の音を合図に取り出してみると。
「何度だ?」
私が見るよりも先に、輝さんが体温計を取り上げた。
眉を寄せた輝さんに不安を感じる。
そんなに熱が上がったんだろうか。
輝さんは体温計をケースに戻し、心細い表情に違いない私をちらりと見遣った。
「結構、高いな。薬を飲んで、様子をみるか。その前に何か食べられるか?
おかゆでも作るから、しばらくここで待っていてくれ」
「あ、そんなの申し訳ないです……私なら、大丈夫です」
「大丈夫じゃない。熱もあるしふらふらだろ?」
そう言って輝さんは私の頬を優しく撫でてくれた。
はっきりと教えてくれなかったけれど、私の熱って、そんなに高いのかな。
熱が高いとわかれば、それだけで更に体はだるくなるものだから、輝さんは気をつかってくれたんだろうか。