極上の他人
輝さんを好きな気持ちを捨てなくちゃいけないのに、こうして心配されると、捨てるのはもう少し後でもいいかななんて、熱のせいかおかしな考えすらよぎる。
一人暮らしをする私にとって、病気になることほど心細いものはない。
これまでも、風邪をひいた時にはすぐに病院に行って、食料を買い込みひたすら寝ていた。
今回も同じような流れで熱は下がり、ようやくほっとしたところなのに、また熱がぶり返してしまうなんて。
独りぼっちでベッドに寝ている寂しさを考えると、ますます熱が上がりそうで嫌になる。
「輝さん……」
「何?」
輝さんは顔を近づけて、私を安心させてくれるように目を細めた。
それだけで、気持ちが浮上していく。
誰かが側にいてくれることが、こんなに穏やかで幸せなことなんて思わなかった。
それも、好きな人が側にいてくれるのなら尚更だ。
同時に、やっぱりひとりぼっちは嫌だと気づいて気持ちは大きく揺れる。