極上の他人
声さえも客商売向きで軽やかだ。
恋愛慣れしていない、まだまだ未熟者の私にぐぐっと響くその甘くて優しい声に、呼吸が止まる。
「か、かわいらしいなんて……」
「よく言われるんじゃないですか?色白の小さな顔に大きな瞳。ほどよい厚さの唇が男を誘っているように濡れていて。
華奢な体は守って欲しいと訴えるように震えている。可愛らしい、というよりも目が離せない魅力がありますね。よく言われるでしょう?」
滑らかな言葉の羅列に、私は何も言えずじっと聞くだけだ。
その言葉の真意を理解しようとあらゆる思考をフルパワーで働かせるけれど、結局私の口から出たのは。
「……見た目はいいけど、えっと……あなた、どこかおかしくないですか?」
思わず口を突いて出た、呆れた声だった。
普段、初対面の人にこんな失礼な言葉を使うことなんてないけれど、『魅力がある』とか言われ慣れていないせいか、ぽろりと言ってしまった。
そんな私の言葉にひるむことなく、目の前の輝さんは楽しそうに笑った。