思春期の正しい壁ドン
本当はもっと仲良くなってから告白するつもりだったのに、あいつら……
数学の授業を受けながら、俺はちらちらと彼女の方を見てしまう。
立花千紗ちゃん。
文芸部の部員で、赤い眼鏡が可愛い文学少女。
教科書を読む声がとても綺麗で、俺はいつもうっとりしてしまう。
数学の授業じゃ教科書を読まされることなんてほとんどないし、こうして教科書の陰に隠れて彼女を見るしか出来ない。
長い黒髪が日の光を受けてきらきらしている。
同じ黒髪でも、スポーツ刈りの俺には真似できない芸当だ。
あいつらが送ったメールに了解と返信してくれたけど、まさか告白とは思ってないだろうな。
メールアドレス聞き出したのも、わざと同じ委員会に入ってそれを口実にしてのことだったし。
今回のことも委員会の用事かなににだと思われてると思う。
こうしている今も、千紗ちゃんは俺のことを気にする素振りも見せないしさ。
壁ドン……か。
バカバカしいと思ったけど、バスケ馬鹿の俺のことを意識してもらうきっかけぐらいにはなるかもしれない。
真面目な千紗ちゃんに俺なんかを好きになってもらうには、あれぐらいのインパクトが必要なんだ。
きっと!
俺は放課後への気合をメラメラと燃やす。
*
あいつらが千紗ちゃんを呼び出した茶道部の部室は、授業でも使う和室だった。
茶道部の活動は曜日が決まっていて、今日は使われない。
使われないということは人が寄りつかないということで、告白にはもってこい。
それに、床が畳なのでいろいろな万が一にも安心だ。
壁ドンするなら先に待っているより、後から待ち合わせ場所に入って行った方が都合がいい。
とのアドバイスもいただいていたので、俺は和室の入口が見える柱の陰に隠れて千紗ちゃんを待っていた。
千紗ちゃんはしっかりしてるから、俺の方が少し遅れて行っても待ってくれていると思う。
でも、遅れて行って実はもう待ちきれなくて帰っちゃいましたっていうパターンも考えられる。
呼び出しておいて遅れるなんて、好感度は確実に下がる。
俺が先に待っているわけにはいかない。
かといって、千紗ちゃんをお待たせしてしまうわけにもいかない。
そこで俺はここで茶室の入り口を監視して、千紗ちゃんが到着したらすぐに走っていけるようにスタンバイ。
き、来た……!
柱の陰から顔を半分出していると、廊下の奥から千紗ちゃんが歩いてくるのが見えた。
こんな格好悪いところを見られるわけにはいかないと頭を引っ込め、気配を探る。
一瞬見えた千紗ちゃんは紺色のプリーツスカートをひらひらさせて、膝こぞうをちらちらさせていた。
もう視界に千紗ちゃんはいないっていうのに、俺の心臓は試合のハーフタイム直前みたいにバクバクしていた。
俺が胸を押さえている間に、千紗ちゃんが和室に入っていく気配がした。
い、行かねば……!
数学の授業を受けながら、俺はちらちらと彼女の方を見てしまう。
立花千紗ちゃん。
文芸部の部員で、赤い眼鏡が可愛い文学少女。
教科書を読む声がとても綺麗で、俺はいつもうっとりしてしまう。
数学の授業じゃ教科書を読まされることなんてほとんどないし、こうして教科書の陰に隠れて彼女を見るしか出来ない。
長い黒髪が日の光を受けてきらきらしている。
同じ黒髪でも、スポーツ刈りの俺には真似できない芸当だ。
あいつらが送ったメールに了解と返信してくれたけど、まさか告白とは思ってないだろうな。
メールアドレス聞き出したのも、わざと同じ委員会に入ってそれを口実にしてのことだったし。
今回のことも委員会の用事かなににだと思われてると思う。
こうしている今も、千紗ちゃんは俺のことを気にする素振りも見せないしさ。
壁ドン……か。
バカバカしいと思ったけど、バスケ馬鹿の俺のことを意識してもらうきっかけぐらいにはなるかもしれない。
真面目な千紗ちゃんに俺なんかを好きになってもらうには、あれぐらいのインパクトが必要なんだ。
きっと!
俺は放課後への気合をメラメラと燃やす。
*
あいつらが千紗ちゃんを呼び出した茶道部の部室は、授業でも使う和室だった。
茶道部の活動は曜日が決まっていて、今日は使われない。
使われないということは人が寄りつかないということで、告白にはもってこい。
それに、床が畳なのでいろいろな万が一にも安心だ。
壁ドンするなら先に待っているより、後から待ち合わせ場所に入って行った方が都合がいい。
とのアドバイスもいただいていたので、俺は和室の入口が見える柱の陰に隠れて千紗ちゃんを待っていた。
千紗ちゃんはしっかりしてるから、俺の方が少し遅れて行っても待ってくれていると思う。
でも、遅れて行って実はもう待ちきれなくて帰っちゃいましたっていうパターンも考えられる。
呼び出しておいて遅れるなんて、好感度は確実に下がる。
俺が先に待っているわけにはいかない。
かといって、千紗ちゃんをお待たせしてしまうわけにもいかない。
そこで俺はここで茶室の入り口を監視して、千紗ちゃんが到着したらすぐに走っていけるようにスタンバイ。
き、来た……!
柱の陰から顔を半分出していると、廊下の奥から千紗ちゃんが歩いてくるのが見えた。
こんな格好悪いところを見られるわけにはいかないと頭を引っ込め、気配を探る。
一瞬見えた千紗ちゃんは紺色のプリーツスカートをひらひらさせて、膝こぞうをちらちらさせていた。
もう視界に千紗ちゃんはいないっていうのに、俺の心臓は試合のハーフタイム直前みたいにバクバクしていた。
俺が胸を押さえている間に、千紗ちゃんが和室に入っていく気配がした。
い、行かねば……!