まんなかロックオン
「…私だって、わからない。けど、ムカついたからっ…」
こんなことを言ってしまうあたり、ほんとに私はそろそろ、病院に行かなくてはならない。
目を合わせることができないままそう言うと、頭上からかすかな笑い声が聞こえた。
驚いて、顔を上げる。けれどすぐに、後悔した。
…コウは、少し赤い顔をして、嬉しそうに笑っていた。
「麻佑、その『ムカついた』って、なんていうか知ってる?」
…ああ、瞳のまんなかが、コウでいっぱいになる。
チカチカ、キラキラ。…もう、やだ。
「…知ってるよ」
「ほんとに?麻佑があんなこと言うなんて、信じられないんだけど」
だって、抑えられなかったんだから。コウが悪い。むしろ、あんなことを口走ってしまった自分が信じられない。
「…私のこと、好きだとか言ったくせに、他の女子にクッキー貰って喜んでるからっ…」
言葉は最後まで、言わせてもらえなかった。
ぎゅう、と抱きしめられ、身体が硬直する。…えっ?