まんなかロックオン
…な、なんで、いるの。男バスも、みんな帰ってるじゃん。
「す…水曜は、いつもやってるの。男子のキャプテンが、遅くまで部室に残ってるから…」
毎週水曜日、体育館の鍵を持っている男子のキャプテンの先輩は、いつも遅くまで部室にいる。
先輩が鍵をかけに来るまで、私はこうやってひとりで練習しているのだ。
コウはさして表情を変えることなく、「知ってるよ」と驚くべきことを言って、さらに付け足した。
「先輩、もう帰ったよ」
「えっ!?」
うそ。慌てる私に、コウは「用事だって」と言う。用事?えっ、でも先輩、鍵かけにこなかった…えっ?
「えっ、鍵、どーすりゃいいの…」
「大丈夫。俺が先輩から預かったから」
その言葉に、ぽかんとした。預かった、って…
「俺も、一緒に練習していい?」
もとからそのつもりだったのか、コウはまだ制服に着替えていない。荷物も、部室に置いているようだった。