秘密の言葉
「分かった、言うから…。だから、落ち着いて?」

落ち着いてるよ…。
でもこんなに荒々しくしてるのは、恵美なのに…。

「…じゃあ、話して」

まずは、話を聞こう。
恵美は言おうとしてるんだから、私も聞かなきゃ。

「さっき、話しかけたんだけど…」


ーー『あの、こんにちは!』

『っ…こんにちは』

『私、恵美って言います!空、恵美』

『空ちゃんか、どうしたの?』

『あの、よければ私と…お友達になってくれませんか?』

『ごめんね、気持ちだけ受け取っておくよ』


「…ここまでは至って普通の会話でしょ?問題はここから」

恵美は、少しキョロキョロしながら話している。

「次は?話して…」


ーー『あ、待って…!』

腕を掴もうとした。
いいえ、掴んだの。
そしたら一瞬ものすごく寒気がして、手をみたら、腕を掴んで無かった。

『また何処かでね、空ちゃん…』


「…いくら修行中とはいえ、伊達にお寺の娘だよ、分からないはずが無かった」

もう、答えは分かった。
耳を塞ぎたい衝動が、こみ上げてくる。

「彼は、幽霊なんだよ!彼は存在しないの…!だからっ…」

「もう、いい加減にしてよ。何で腕を掴めなかっただけで幽霊扱いなの?私は…私はっ、絶対に信じない!」
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