秘密の言葉
「私は、あの行動を悔やんだりはしてないの。だってまだ4歳だったのに『お姉ちゃん…お姉ちゃん…お花、あげる…』って笑ったんだもん。普通だったら、痛い痛いって叫ぶのに。妹は最期まで私に笑顔を見せた」

恵美は笑った。
でも全然、不謹慎じゃなかった。
だって、恵美も…妹ちゃんも、幸せそうだから。
姉妹の絆、なのかもしれない。

「ありがとう、話してくれて。私は、恵美が笑ってる限り…妹ちゃんも笑ってると思うよ、絶対」

私は、真っ直ぐ恵美をみた。
恵美は、大きく頷いて空をみた。
そして、手を伸ばしてこう言った。

「…ありがとう…」

"ありがとう"は、魔法みたいだ。
空の彼方へ、飛んで行きそうな程、大きな思いが詰まった言葉。
恵美は、最初妹に会うためにお寺を継ごうとしてた。
でもそれを両親は反対した。
『死者に会うことが、前に進む事では無い』と。
恵美はそれから、妹や死者を見守る様に修行を続けた。
『妹や死者が、天国で幸せに暮らしている事は、私の幸せでもある』って…本当に恵美は、もう立派な大人だなと思った。
それから恵美は強く言ってた。
『まずは、生きている人との一瞬一瞬を、大切に…そして楽しく生きよう』
そう思ったと。
私も、恵美のお陰で気づかされた。
今自分の周りにいる人の大切さや、愛しさに。
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