秘密の言葉
「お母さん、お父さんってどんな人?」

「あの人?ああ…あの人はね…」

すごく…嫌な顔をしている。
どれだけ酷い人だったんだろう…。

「お父さんは、お医者さんだったのよ?だからあんまり家に居なかったの。それで帰ってきたら『おい、飯』みたいな?もう、こっちだって疲れてるのって…」

「えっ…それだけ?」

「ううん!そんなのは普通だったから、気にしなかったんだけど。ある日突然部下の若い女の人の話ばっかし始めて、『あなたはその部下の方が好きなの?』って言ったら、『ああ、確かに外見も若さもお前以上だな』って言い始めたの」

何か、凄い夫婦。
仲良いのか悪いのかわからない…。

「お父さんは、お母さんにどうやってプロポーズしたの?」

「まあまあ、まだ話の途中だからね?それで、『じゃあ若い子巡りでもしな』って離婚届だけ渡して追い出した」

『追い出した』って…。
すごく、緩いな。
って事は、結婚もあっさりなのかな。

「お父さんもお母さんも、私をどっちで育てるとか決めなかったの?」

「それは、私が『絶対子供は渡さないから』って言ったわ」

あっさりだけど…すごく嬉しい。
『どっちが育てる』ってなってしょうがなくだったら、すごく悲しかったから。
愛してくれてるんだな…。
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