空も飛べるはず【短】
空も飛べるはず
大きな貸出カウンターの中で、きみは広い背を猫のように丸めてゲームをしていた。
うちの学校はスマホ禁止です!
……なんて言えるわけもなく、あたしは見て見ぬふりをして、カウンターの端で文庫本を広げていた。
土曜日の授業のあと、図書委員のあたしは、図書館にいる。
仕事は特にない。
たまに来る生徒の本の貸出と、返却業務だけ。
司書の先生は閉架書庫にこもって、本を読みふけっている。
委員会の仕事は毎週あるわけじゃない。
ローテーションでたまーに回ってくる。
あたしは本が好きだから、本に囲まれてるこの時間が好き。
だけど、きみは違うみたい。
「ふわぁ~あ」
大きなあくびをしたきみは、スマホをカウンターの上に置き、首をこきこきと鳴らす。
そしてぼんやり宙を見つめたあと、またスマホを手にとった。
きみは、同じクラスの江藤くん。
バスケ部員のきみは背が180cmと高くて、目は二重でかわいいのに、つりあがった眉と短い茶髪の効果できりっとして見える。
クラスではよくしゃべっていて、男女問わず人気があって、地味でチビで目立たないあたしとは、正反対。
< 1 / 15 >