空も飛べるはず【短】


それは自然の法則。


あたしが、きみに手が届かないのと同じくらい、当然のこと。


幸せで風船みたいに膨らんでいた胸が、ぷしゅってへこんじゃった気がした。


痛くて、次から次へと涙が溢れそうになる。


目頭が、熱い。


「な、泣いちゃダメだ!
充電器、渡してあげなきゃ……」


ぶるぶると首を振っていると、後ろから声がした。


「……なに一人で飛んだりしゃべったりしてんの?」


びくりと肩が震えて、振り返る。


部室の前で待っていたんだから当然だけど、そこにはきみがいた。


あきらかにビックリした顔だ。


そりゃそうだよね。
あたし、バリバリ文化部なのにここで一人で飛んでたんだもん。


イタイ。イタすぎる……!


「あ、あのね、充電器忘れたでしょ……」


慌てて髪を手で直しながら話しかけると、きみは怖い顔で、「しっ」と人差し指を唇の前に出した。


「ちょっと、こっち来い」


ぐいっとすごい力で腕を引っ張られた。


驚いている間に、バスケ部の部室と体育倉庫の間の隙間に連れ込まれる。




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