空も飛べるはず【短】
うなずくと、大きなきみの体が、あたしを抱きしめた。
初めて感じる、男の子の体温。
あたたかいのにやっぱり胸はかたくって、だけど少しだけ弾力があって。
大きなきみと小さなあたしだけど、まるでパズルのピースみたいに自然に重なるのが、不思議。
あったかくて、気持ち良くて、ずっとこうしていたい。
全然怖くなんかなくて、あたしもきみにきゅっと抱きついた。
そうすると、きみが耳元をくすぐるように言う。
「あー……俺、今なら、空だって飛べそう」
あたしはふっと、きみの腕の中で笑う。
ほんとだね。
いつだって空に届きそうな大きなきみだけど。
二人なら、もっと高く飛んでいけそう。
「あたしも」
恋する気持ちは、ふわふわ白い羽になって、あたしたちの周りをくるくる回る。
足元がふわふわするような幸せが、あたしたちを重力から解放するの。
ねえ、きっと。
大人になっても、あたしたちの今のこの気持ちはずっと……この空を一緒に飛んでいけるよね。
あたしは思い切り、背伸びをしてまぶたを閉じる。
きみは猫背になって、そんなあたしの唇に、触れるだけの小さなキスをした。
【END】