空も飛べるはず【短】
「すみませんでした……」
わかってるよ、自分でも。
きみと話があわないことくらい。
スポーツ一直線のきみと、本の虫で空想癖のあるあたし。
住む世界が違うんだ。
とぼとぼとカウンターに戻ると、きみもどかりと元の席に腰を下ろした。
「……だりー。なあ、だるくね?」
「大丈夫です……」
「ふーん。あーあ、早く部活行きてえなあ……」
きみは日の光が差さない図書室で、しおれたひまわりのようにうなだれる。
「バスケ部だよね」
あたしが言うと、きみは顔を上げた。
「知ってんの?」
「同じクラスの人の部活くらい、なんとなく把握するでしょ」
「ふうん……そっか。だよな」
きみは納得したようにうなずいて、少し微笑んだ。
ドキッとするけど、すでに赤面しているだろうから、顔には出ないよね。
でも……冬なのに、顔だけ熱い。
「バスケ……好き?」
あたしはきみに答えのわかっている質問をする。
「うん、好き」
『好き』
そのたった一言が、聞きたかったから……。
たとえ、自分に向けられた言葉じゃなくても。
ねえ、きみは気づいていないよね。
あたしが、ずっときみに憧れていることを。