空も飛べるはず【短】
「じゃあ、プロを目指したりするの?」
「はあ?んなわけねーじゃん。
背もちっこいし、プロで一生食えるわけねーし」
「大きいと思うけど……」
「モデルと一緒。
日本ででかくても、海外行ったら俺なんか豆だよ、豆」
きみがお豆……そうしたらあたしは、なに?ゴマとか?
思わず吹き出すと、きみもくくくと、のどを揺らして笑った。
そして、一瞬だけ……すごく寂しそうな顔をしたんだ。
「あーあ、3年になんかなりたくねーな。
大人になんかなりたくねえ。
一生部活の仲間とバスケができりゃ、それでいいのにな……」
大きなきみは、また猫背になってスマホに視線をうつしてしまった。
たぶん、時計を見ているんだよね……。
ちくりと胸が痛む。
そんなきみ、見ていられないよ。
「……江藤君、部活行っていいよ」
「……は……?」
「先生にはうまく言っておいてあげる。
部活、行っておいでよ」
やっぱり声は上ずってしまったけど、言葉は意外にすんなりと出てきた。
そんなにバスケが好きなら、こんなところで我慢していることない。
あたしたちの時間は限られてるんだから、好きなことをした方がいい……。