空も飛べるはず【短】
「……マジで?」
「うん」
「そっか……ありがとう、行かせてもらうわ」
きみはぱっと顔を輝かせると、スマホをポケットにしまい、カバンを持って立ち上がる。
大股であっという間に出口に着くと、にっと笑って手を振った。
バタンとドアが閉まったあと、あたしはカウンターにつっぷした。
江藤君のバカ。無神経。
だから男子なんていやなんだ。
あたしといる時間が、そんなに苦痛なの?
きみはバスケが好きで、本が嫌い。
でも、そんなきみが、あたしは大好きなの。
そんなあたしを、無視しないで……。
自分で行けって言ったくせに、寂しさが胸からのどに上がってきて、泣きそうになった。
この前入学したばかりだと思っていたのに、もう2年の冬。
来年は受験生で、すぐに卒業。
きみを遠くから眺めているだけの日々も、もうすぐに終わってしまう。
そんなあたしからすると、この委員の仕事の時間はすごく特別で、すごく幸せなのに……。
たとえ話すことがなくても。
たとえ、きみがつまらなそうな顔をしていても……。
こつん、と肘に何かが当たった。
ぱっと顔を上げて見ると、そこには江藤君のスマホの充電器が、置き去りにされていた。