空も飛べるはず【短】
3時。
図書室を閉めて、体育館に向かう。
明日は日曜日。
学校も図書室も開いていない。
だから……充電器がなかったら、きっと困るよね。
体育館に向かう途中の中庭で、冬の冷たい風が吹き抜けた。
それにも関わらず、体育館の扉は空きっぱなしで、ボールが跳ねる音や、人の声が聞こえてくる。
見つからないようにそっと顔を出す。
すると冬だと言うのに、むわりとした熱気が頬を包んだ。
ここまで来たのはいいけど、どうしよう。
誰か……マネージャーさんとか通りかかったら、充電器渡せるのに……。
でも今はゲーム中らしくて、みんながそっちに集中してる。
「あ……」
動き回る部員の中に、きみを見つけた。
大きな男の子のたちの間でも目立つ、短い茶髪。
きみは妖精の金色の粉をふりかけられたように、きらきら輝いて見えた。
床がシューズでキュッキュと鳴る中、きみは相手チームからボールを奪う。
あっという間に相手チームのディフェンスがきみの行く手をはばむ。
するときみは、顔は前を向いたまま、すぐ後ろにいた味方に片手でパスを出した。
「すっご……!」
ボールは無事に味方の手に。
どうして?
後ろを見てないのに、どうしてあんなことができるの?
漫画みたい!すごい!
一度ボールは後ろに戻って、またゴールを目指す。
「がんばれ……」
気づけば、声が出ていた。
とてもとても、小さな声だったけど。