空も飛べるはず【短】
きみは、まるで空間を切り裂くように速く走る。
立ちはだかる人の壁を避けて、味方に声をかけて……。
そしてゴール下でボールを受け取ると、きみは床を蹴った。
ふわりと、大きな体が宙に浮く。
あたしよりずっと重いはずの、全身にうっすらと筋肉のついた体が、まるで空まで飛んでいっちゃいそうな勢いで、重力の呪縛から逃れる。
「わあ……っ」
伸ばされた手から、ボールが弧を描いて……。
すぽりと、ゴールネットを通過していった。
ホイッスルの音がする。
味方とタッチするきみ。
額の汗をそででぬぐって、笑う。
それは、図書室ではいつもむっつりしているきみの、見たこともない笑顔だった。