インビジブル・ビート
男バスの児嶋くんとマネージャーの瑞希ちゃんが、最近付き合いはじめたらしい。
さっき校門を出たところで手を繋いで帰るふたりを見かけて、びっくりして思わずりょーたに聞いてみたら、知らなかったの?って逆に驚かれた。
「えっ、わたし初耳! そんな有名なハナシなの?」
「わりとね。なんだ、女バスにはまだ伝わってねぇんだ」
なんてこった。
これは大ニュースだ。
だって、あの児嶋くんと瑞希ちゃんだよ。バスケ部いちばんの美男美女。
好奇心のかたまりみたいな女バスメンバーがそんなおいしい情報を掴み損ねるわけない……から、わたしが知らなかっただけだ。たぶん。
そっか、ついに瑞希ちゃんが。
そっかあ……
「手、繋いでたね」
「ふーん……おれよく見えなかったけど、」
歩道の上を、赤とシルバーの自転車で二列走行中。
前方から人が歩いてきたから、わたしたちはいったん一列になって、会話を止めた。
一列になるときはいつも、わたしが前に出ることになっている。特にそうしよう、って決めてあるわけじゃないけど。暗黙の了解みたいなもの。
彼と付き合いはじめて、一緒に帰るようになってから、ずっとそれは変わらない。