インビジブル・ビート
 


そしてわたしはいつも、前に出て加速した後に極端すぎるくらいにスピードを落とす。
りょーたがすぐに追いついてきてくれるように。


でも先頭になるの、本当はあんまり好きじゃない。
彼がちゃんとついてきてくれているのはわかっているけれど。ちょっと心細くなる。はやくまた隣に並んでくれないと、なんとなくそわそわする。
不安になる。


児嶋くんや瑞希ちゃんみたいに、電車通学だったらな。

手を繋いでゆっくり歩くふたりの姿が、キラキラ加工つきで、ずっと頭から離れない。
……やっぱり、いいなあ。いかにも恋愛してますって感じで。

この寒い中、自転車をビュンビュンとばしてムダに体感温度を下げてるわたしたちとは違う。

すごくすごく、あったかそう。



「ちい、コンビニ寄りたい」

歩行者がいなくなって、後ろからぐん、と横に並んできたりょーたが、少し先に見える看板に視線を投げた。

「いいよ。何か買って食べる?」
「ん、腹減った」


わたしたちはお手軽に、通学路にある普通のコンビニへ。
たとえば瑞希ちゃんたちなら、お腹がすいたら駅前のドーナツ屋さんでイートインしたりするのだろうか。


(……そういえばあの店、最後に行ったのいつだっけ)

シナモンの香りが鼻の奥から広がってくるような感覚に、ふと、甘いものが食べたくなった。


 
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