インビジブル・ビート
「あーわかった。ちい、児嶋たちが手繋いでたのみて羨ましくなったんだ」
にやりと意地悪く笑うりょーたが憎たらしくて、でも、素直にそうだとも頷けず。
ゆるゆると指を絡ませてくる彼の手を、ただじっと見つめる。
筋張ってて、でも肌は意外とすべすべしててなめらかで。
こんなに大きくてあたたかったんだ。
知らなかった。
「……羨ましくなった、っていうか、」
「うん?」
「ちょっと、焦ったの、かな」
女の子らしくて可愛い瑞希ちゃんのことを、実は心のどこかでは面白くなく思っていて。
でも彼女には彼氏がいなかったから、なんとなく、優越感みたいなものを抱いていたのかもしれない。
児嶋くんと手を繋いで帰る彼女を見て、最後の砦を崩されてしまったような気がして――って言ったら、それ大袈裟すぎだろ、とりょーたに笑われた。
「ははあ、じゃあちい的には、瑞希たちより進んだ状態でいたいわけか」
「……進んだ状態?」
「手繋ぐのはクリアしたな。はい次、目ぇ瞑って!」
繋いでいた手が離れたと思ったら、今度は両手でがしりと両頬を挟まれた。
ギギギ、と強制的に顔をりょーたの方に向けさせられる。
「え、な、なに!」
「なにって、……そんなのやればわかる!」
やればわかる、って!
いや、やらなくてもなんとなくわかってしまうのだけれども!