澪ちゃん恋をする
「今日ね、紗枝ちゃんに食べてもらおうと思ってこれ持ってきたのって…」
俺は入ってきた女と目が合った。
背が高くておとなしそう。
でも紗枝と同い年ではないだろう。
確実に年上。俺と同じくらいか?
そう思っているとその女が口を開いた。
「あっえっと、お兄さんですか?」
女は俺を見てそう聞いてきた。
「あ、はい」
「あっ!お兄ちゃん!この人、仁菜ちゃん!院長先生の娘だよ!」
紗枝が入ってきた女を見ながらそう言った。
コイツが、あの院長の娘か…似てねぇな。
医院長の目は棒だ。
いや、針ってほど細い。
でもこの女はどちらかと言うと目は大きい方だろう。
この病院とはもう紗枝が1歳のときからお世話になっている。
だから俺も院長とは顔見知りだ。