澪ちゃん恋をする


「初めまして。吉井仁菜です」



「田端良樹です。いつも妹がお世話になってます」



俺はそう言ってお辞儀ををした。

すると、仁菜って子はいきなり笑い出した。



「あははっ!紗枝ちゃんからお兄さんの話は聞いてたけど、思ったよりしっかりしてる!」



そう言いながらケラケラと笑っている。

えっ?と思う。

てか思ったよりもしっかりって、紗枝は俺のことなんて紹介してんだよ!?

紗枝をギロっと睨んだ。

そうすると紗枝はてへっと言って、舌をペロっと出した。

それを見て、俺の妹はやっぱりかわいいと思った。

今思うと、俺は結構シスコンだったなと思う。

話を聞けば仁菜はやっぱり俺と同い年だった。

それから仁菜はちょくちょく紗枝の所に訪れては、自分で焼いたクッキーを持ってきてくれた。

仁菜の作ったクッキーはそこらへんで買うやつなんかより、断然うまかった。

今回は2週間ほどの入院で退院となったが、病院と俺ん家が近いから、仁菜はたまに家までお菓子を届けてくれたりした。

そしてその年の冬休み前、妹は風邪をこじらせて入院した。

すこしの入院だと思っていたが、案外長引いて、入院生活は2ヶ月になった。

しかし、俺と妹は知らなかった。

この検査で医者に、妹はもう長くは生きられないと言われていたことなんて…。

その事を知ったのはその1年後、俺が中2のクリスマスの夜だった。

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