澪ちゃん恋をする
「…お、にい…ちゃん」
紗枝は酸素マスクをしたままうっすらと目を開けて俺を見た。
今日の朝までは元気だったのに。
正月に初日の出を見にに行く計画を経てていたのに。
今はこんなに弱々しく俺を呼ぶ。
「紗枝?俺だよ。わかるか?」
「うん…わかるよ」
そう言って目を細める。
妹のこんな姿、見ていられない。
俺が代わってやりたかった。
「おにいちゃん…」
「ん?」
突然紗枝が俺を呼んだ。
そして、ゆっくりと話し始めた。
「紗枝ね、夢があったんだ…」
そう言って紗枝は病室の天井を見つめた。
俺や、父親、母親、院長、そして今駆けつけた仁菜は黙って紗枝の話を聞いた。
「夢?」
小さな声で聞き返すと紗枝は少し照れたように言った。