澪ちゃん恋をする
「紗枝…疲れた…」
ボソッと言ったその言葉に、俺は焦った。
妹が、紗枝が、手の届かないところに行ってしまう。
そんな気がして…。
「さ、紗枝…。お前、その夢を諦めるのか?」
俺がそう言うと紗枝は俺を見て微笑んだ。
「…うん。…無理…だよ…。もう…」
そう言って紗枝は窓の外を見つめた。
『諦めた』という顔をして。
俺はそれを見て、悲しくなった。
なんで、そんな簡単に諦めるんだよ。
そして言った。
「俺は、すぐに諦めるヤツは…嫌いだ」
紗枝はビックリしたように俺を見た。
「良樹…」
親父はそっと俺の肩に手を置いた。
あっと思ったときにはもう遅い。
紗枝は悲しそうに俺を見ていた。
「…悪い」
ごめん、そんな顔をさせるつもりじゃなかった。
俺はそう言って病室から出ようとした。