澪ちゃん恋をする
それから俺は勉強もしたし、不良も辞めなかった。
さすがに受験のときはそれなりの格好をしたけれども。
そして、立花に受かって、今でも勉強と不良を両立してやっている。
こんな見た目だけど、成績はいつも上位だ。
仁菜も将来は院長の後を継ぐらしいから、これから大学もきっと一緒だろう。
でも仁菜にはもう1人、幼なじみがいるらしい。
たまに話に出てきたが、どうやら仁菜はそいつのことが好きらしい。
そいつも立花高校でこの高校に来て初めて見たが、カナリ爽やかな男だ。
少し仁菜に好意を持っていた俺はショックだったが、応援してやることにした。
でも、この前仁菜が頼んできた。『この子、どうにかして』と。
きっとその幼なじみに付きまとってでもいる女だろう。
すぐにそう察した。
昔から仁菜の頼みは断れない俺。
悪いこともいろいろしてきたから、今回も軽く引き受けた。
そして、今佐伯澪を呼び出して、拉致して、男たちに襲わせようとした。
「…無理…だよ…。もう…」
佐伯が窓の外を見ながらそう言った。
その瞬間、佐伯の顔が紗枝に見えた。
え?
「…さ…え…?」
その横顔があまりにも切なすぎて、なんとなく、紗枝が俺にこんなことをしちゃいけないと、注意しているように感じた。